愛されたかった、好きだった。
木下くんは、綾乃くんの言葉を切り捨てて、私の言葉を待っているようだった。
「別に女の子たちに逆恨みでいじめられてるだけ」
「よし、じゃあこうするのはどうだ」
獲物を見つけたと言わんばかり髪色と同じ色の瞳の奥は確実に私を捉え、ギラギラと光っていた。
「嘘でいいから付き合え」
「は?」
「お互いの損得を考えた上で、この話はかなり得すると思うぞ?
お前は俺といれば確実にいじめられることはない。 濡れ子だなんて、名前払拭したいだろ?」
「確かに私は得だけど、それだとあなたにとっては得より厄介が増えて損するんじゃない?」
「大丈夫、今は言えないけど俺も得するから」
ちろりと木下くんの横に立っている綾乃くんは何か口を挟むわけでもなく、ぼんやりと桜が散っているのを見ているだえだった。
「ね、俺と付き合って損はさせない、だから俺と付き合え」
別に困ったことがなかったと言えば確かに嘘になる、ジャージや制服を破かれる度に保健室からパクるのは正直気が引けていた。