愛されたかった、好きだった。
廊下を歩く私達を見て、真実はちゃくちゃくと塗り替えられ私に対する中傷的なものへと変わっていくのに時間はかからなかった。
『濡れ子が身体を使って、木下 秋斗を誘惑し嫌がっているのにも関わらず無理やり彼女になった』という筋書きの元作成されていく噂の数々。
中庭から二階へと上がった短時間で、この学校の生徒の中では悪者は私になったらしい。
はぁっと誰にも気づかれぬように小さく溜め息をする。
隣の男は先ほどまでの態度とは違い、キラキラと輝く笑顔を周りに振りまいていた。
綾乃くんはというと、女の子から名前を呼ばれても無視、とりあえず無視。
気怠そうに私と木下くんの後ろを歩いている。
「おーい秋斗ー」
前からは、グレージュの髪色をした愛想の良さそうな子が手を振りながら歩いてきていた。
「綾乃も何してたのすごい遅かったけど、あ、君が秋斗のお姫様ね」
「綿引 仁太(わたびき じんた)です、どうぞよろしくね」
王子様スマイルとはこういうことを言うのだろうか、薔薇が咲いているかのように綺麗な笑顔は周りにいた女子を倒れさせてしまうほどに素晴らしいものだった。