愛されたかった、好きだった。
プルルルル プルルルル
『どうだった?』
歌うような彼女の声は透き通っていて、柔らかい陽だまりのようで昔から大好きだった。
「どうも本当みたいだねぇ〜」
『三木 紘ね…。
やっぱりちょっとだけ、苦しいや』
キシリと、ベットか何かが軋む音と男の声が聞こえる。
『もう、電話してるからあっちいっててよ』
彼女と男は揉めてるようで言い争いをしているようだった。
愛に飢えており、体の関係を求めるのは寂しさを紛らわす為だと昔言っていた。
僕が寂しさを埋めると言っても、彼女が首を縦に振ったことは一度もない。
彼女に何故かと理由を尋ねると『手放したくない』と泣きながらに言われて、それ以上何も言えなかった。
僕と彼女と秋斗_______
1番近い距離にいるけど、その分脆くてすぐ壊れてしまう。
『やめてって言ってるでしょ!
もう帰る、私を束縛しようとするなら地位と度胸を備えてから出直してきなさい』
殴ったのだろうか、バキッと音がして男の声が全く聞こえなくなっており、
コロコロとキャリーケースを転がす音と共に彼女はそう吐き捨てた。