愛されたかった、好きだった。
「ほら、紘ちゃんも鞄貸して」
木下くんの机の横に掛かっている鞄を持った仁太くんは、ニコニコとしながら私にそういった。
が、私はそれをとりあえず拒否する。
今の私は彼にしがみつくことでいっぱいいっぱいだから片手を離すなんてこと到底不可能な話だ。
「そっかー、じゃあ俺先に潤(じゅん)さんに車回してもらえるように手配しとくから2人はゆっくりきてね」
仁太くんはパタパタと教室を出て行き、お姫様抱っこされた私と、木下くんの2人が残されてしまった。
「ねぇ、潤さんって?」
「あー、車回してくれたり、俺たちの後処理してくれる本場の人」
本場って…やばい人ってことだよね。
「やめて、やめてよ_______」
脳裏にあの日の光景が浮かびすぐに頭を振る。
「どうした?」
首に回す手に力が入ってしまっていたのだろうか、不思議そうに木下くんは私を見た。
「何にもないから、早くおろして」
なにも知らない。
なにも覚えてない。
男は嫌い、憎むべき相手。
それ以外に何も思うことはない、空っぽになってしまえばもう怖いことは何もない。