愛されたかった、好きだった。
校門の前に止まっていた黒塗りのワゴン車は異様な存在感を放ち、私を怖がらせるのには十分なものだった。
「ほら、はやくはやく」
先に乗っていた仁太くんは車の窓を開けてニコニコと言っていた。
まだ、白色の車ならバラが咲いたような笑顔が映えて見えたのだろうが、黒色だとどうも不釣り合いのように思える。
「おー」
返事後すぐ、車内の座席に投げられ木下くんは私を逃がさんとばかり私の隣に腰を下ろした。
「なっ…!!」
木下くんが乗ったことを確認すると車は走り出してしまった。
「おい、秋斗その子は?」
「俺のオンナ」
「はぁ?
自分のオンナと一緒ならバイクに乗れよ」
「バイク乗ってくんの忘れた」
「ったく…」と言うと、それ以降潤さんも彼らも喋るのをやめてしまい、空気も重苦しく、行き先も分からないまま私は車にゆられた。