愛されたかった、好きだった。
「濡れてる…」
手からタオルを奪われ、我に返るがすぐに視界が真っ暗に変わる。
「え、ちょっと!」
被せられたのであろう、タオルを退け一体何なんだと彼を探す。
「怪我もしてる、じっとしといた方がいいよ」
ガタガタと救急箱から湿布やら絆創膏、消毒液などを出して手当てする気満々のようだ。
「足出して?」
この目には、人を従わせたりする魔法でも掛かっているのだろうか無意識のうちに私は足を差し出していた。
ただお互い無言で、口を開こうともしないが、
居心地は悪いけど苦とは思わない。
彼の周りだけ時が止まったように、ゆっくりゆっくりとした時間が流れているようだ。
「終わったから、ちゃんと乾かして服着なよ」
そう言って立ち上がると、さっき使っていた品々を元あった場所に戻すと「お大事に」という言葉だけを言い残してふらりと保健室を出て行った。
「なんだったの…」
私の言葉は宙に舞って散っていった。