手に入らないもの


ただただ美亜をかばいたかった。


美亜は幸せにならなきゃいけない。


俺のことなんか気にしないで


明るい生活を送って欲しかったから

だから諦めようとしたんだ。

自分の部屋へ戻ると
俺は泣いたんだ。

何でかな

大切な人を失ってしまった。


そんな絶望満ちた気持ちだった。


俺は彼女を救いたかった。


でもそれは


自分に嘘をついているということだった。

でも俺は


自分の気持ちより美亜のことのほうが

大切だったんだと思う。


こんなに人の気持ちを考えて行動に移したのは......

初めてだった……

こんなに人のために尽くそうと思ったのは........


初めてだった・・・・・・


こんなに人を想うことができたのも...........


全部全部


初めてだったんだ。


だから失うことの辛さも


隣にいないことの寂しさと


その子の手をつかむことさえ出来ない


小さな願いさえ叶うことの出来ない虚しさと



いっぱい混じりあった


そんな涙だった。



切ない涙だった気がした。
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