生き続ける意味 **番外編**
「亮樹、兄ちゃん…?」
かすかに言うと、亮樹兄ちゃんの肩がすこし動いた。
私服で、髪もすこしボサボサで。
そうとう、急いで来てくれたんだ…そんなことがわかる。
あたしは気まずくて、目をそらす。
亮樹兄ちゃんはあたしを見ると、ふぅと大きい息をついた。
怒ってる、かな。
あたしは…亮樹兄ちゃんの家族でもないのに、迷惑かけて…。
迷惑、なんだよね。
すると、亮樹兄ちゃんはいきなり、あたしを抱き寄せた。
「えっ…」
ぎゅっと、力強く。
体があったかくなる。
亮樹兄ちゃんは…いつもあったかい。
しばらくぎゅっとしたまんまだった。
どうして…どうして。
「どうして……?なんで、来てくれたの…?」
聞こえるか、聞こえないかの小さい声でつぶやいた。
すると、亮樹兄ちゃんはあたしから離れて、頭をなでた。
その表情は、うっすら涙を浮かべていて、微笑んでた。
「桜ちゃん…ごめん、ごめんな…」
何度も、何度も。
”ごめんな” って…。
家族じゃないのに…他人なのに…。
亮樹兄ちゃんは、研修先の仕事があったにも関わらず、駆けつけてくれた…。
そうわかると、どんどん心があったまっていくのが、わかって…。