生き続ける意味 **番外編**
あたしは、わからなかった。
なんでわざわざ来てくれたの?
亮樹兄ちゃん、今はお仕事が忙しいはずなのに。
…どうして、他人のあたしを…こんなに…心配そうな目で見つめてくるの?
「桜ちゃん…。」
あたしは、いつの間にか、涙がこぼれ落ちていた。
こんな気持ち、初めて…ッ。
悲しくないのに、涙が出て、心があったかいの。
亮樹兄ちゃんは困った顔で、あたしの頭をなで続けた。
「桜ちゃん………桜。」
どきり、とした。
施設の先生でさえ、名前をちゃん付けだったのに……”桜” って…。
「桜は、俺と一緒が嫌だった、かな……?」
亮樹兄ちゃんの声が…表情が…心にズキリとささった。
わからないっ…。
あたしは、亮樹兄ちゃんと話したくなくて黙り込んだり、いろいろと反抗したり…
けど、ちがうっ…。
亮樹兄ちゃんと一緒にいて、どこか安心して…どこか一緒にいたいって気持ちがあったから…。
あたしは、人見知りだし、すぐには心を開けないから…。