生き続ける意味 **番外編**
「…ごめん、2人とも。ありがと…」
「…桜、やっぱ亮樹兄ちゃんに電話するな?
熱あるっぽいし…ご飯はちゃんと食べてる?」
あたしは首を振った。
やばい…視界が本当にぼやけてくる…
けど、けど…
「翔…病院は、行かない…」
力のない、小さな声しか出なかった。
「…どうして?行きたくないか?怖い?」
翔の温かい声を聞いて、なんだか涙がボロボロ出てきた。
「っ……怖いっ…それに、亮樹兄ちゃんに会いたくない…」
次々と涙が頬を伝う。
翔と実優は顔を見合わせる。
「亮樹先生に会いたくないの…?」
心配そうに、頭をなでる実優。
「やっぱ、なんかあったのか。じゃないと、部活するの許可しねーよな…」
なにか納得したように、独り言を言う翔。
「だからっ…会いたくないぃ…
家がいいっ……だめ…?」
泣きながら翔を見つめると、一瞬、頬が緩み、親指で涙を拭き取った。
「…ん、ただし条件付き。
少しでもいいから、ごはん食べて、ちゃんと薬飲むこと。
それと、これ以上苦しくなって、俺らが病院行かなきゃって判断した時、素直に行くこと。
…ちゃんと守れる?」
あたしは、翔の優しさにまた涙がこぼれて、コクンとうなずいた。
「よし、もう泣くな、桜。」
そう言って、髪をなでられた。
「翔、本当に大丈夫?なんかあったら…」
翔は実優をキッチンの方に引っ張ると、声をひそめて言った。
「桜のことは、とりあえず亮樹兄ちゃんには連絡しとく。
だから、何かあったら俺らで病院まで連れてこう。
実優、この後何か用事あったっけ?」
「わかった…
特にないよ!しばらく桜の様子みてようよ。」
「ん、そうしよう。
実優さぁ…俺、桜のこと見てるから、夜ご飯作ってくんね?桜でも食べやすいやつ!」
「おっけ!了解!まかせて〜」
そんな会話がされていることなんて、あたしは眠っていたから知らなかった。