生き続ける意味 **番外編**




涙でびっしょり濡れた目元を、亮樹兄ちゃんが指で拭く。


真剣な顔で、のぞき込まれた。




「桜は、俺の事を嫌いになったことはある?」



落ち着いた、優しい声だった。



…亮樹兄ちゃん?


意外な言葉に、あたしの頭の中は、はてなマークでいっぱいだった。


あたし、ゆっくり首を振った。


すると、亮樹兄ちゃんが笑う。


「俺も一緒だよ。」


そう言って、頭を撫でられた。



……一緒?嫌いじゃ、ないの…?


張り詰めていた心が、一気に解き放ったきがして、亮樹兄ちゃんに抱きついた。


腰に手を回して、ぎゅっとした。ちからいっぱい、ぎゅって。


「…ほんと?けど、いっぱい迷惑かけてばっかり…

亮樹兄ちゃん、あたし、迷惑じゃないの…?」



亮樹兄ちゃんもぎゅっとあたしを抱き締めた。



「桜はさ、俺がどんなに辛い治療してきても、痛いことしてきても、嫌いにならないでくれたでしょ?
それと一緒。」


あたしは首を振った。


「それはっ…亮樹兄ちゃんはあたしのためにしてくれた事だもん。嫌いにならないよっ…」



亮樹兄ちゃんは、ふふっと微笑んだ。



「俺は心配だったよ?いつも。
こんなこと続けてたら、いつか本当に桜に嫌われるんじゃないかって。」



…亮樹兄ちゃん。


亮樹兄ちゃんの言葉に、また涙が止まらなくなって、ただひたすら泣いた。






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