生き続ける意味 **番外編**
っ…!
体中に緊張が走った。あたしは必死に首を振る。
「やだ……また入院なんて、したくないよ…」
茜さんは小さく笑うと、うなずいた。
「わかってるよ。だから、私達もなんとかそうにないように、対策してるんだけど…
最終的な判断は、亮樹先生だから…桜ちゃん、亮樹先生の言うことは聞いた方がいいわよ?」
そうあたしを見て笑う茜さん。
はぁ…笑い事じゃないですよ、茜さん。
あたし、もう入院生活に戻りたくないもん…あんなの、嫌だもん……
しょぼくれるあたしに、茜さんが言う。
「ほら、お昼ご飯まだ食べてないんでしょう?
ちゃんと食べて、栄養つけなきゃ!」
あたしは背中を押され、病室へ戻ろうと歩いた。
衝撃の事実に、頭がついていかない。
つまりは、あたしの体調が安定しなかったり、体調管理出来なかったら、また入院でしょ…?
また体が悪くなる可能性があるから…
それは、亮樹兄ちゃんの判断だけど…
嫌な予感しかしない。亮樹兄ちゃんなら…いや、亮樹兄ちゃんだから、また入院なんて言いそう。
そういうとこ、厳しいからなぁ…
さっきからため息何回目だろ。
働かない頭でそう考えながら歩いていると、ふと後ろから視線を感じた。
…え?
あたしが足を止めると、ピタッと静かになる。
…誰か、ついてきてる?
また歩き始めると、明らかにあたしとはちがう足音が聞こえる。
そして止まると、少しずれて足音が止まった。
…誰か、ついてきてる。
恐る恐る振り向くと、そこには、ヒカリちゃんがあたしのことをじっと見ていた。
「えっ…?ヒカリちゃん…」
思わず声が出た。
そこにいるのは、薄手のトレーナーに、スカート。完全に私服のヒカリちゃんだった。
あれ…入院してるんじゃなかったっけ…?
そんな疑問が浮かぶも、ヒカリちゃんの声にさえぎられた。
「…入院してんの?」
あの時と同じ、警戒してるような声。
あたしは、うなずいた。
「そう…昨日から。
ヒカリちゃんはなんでここに…?」
って、考えてみれば、ここは病院。会ってもおかしくないか…
だめだ。昨日から頭がぼーっとしてて働いてないよ…
「ふぅん……病気なんて知らない子かと思ってた。」
そう呟くと、あたしの点滴を見た。
「…ちがうよ。あたし、つい最近まで病気で入院してたし…
今は、たまたまだけど。」
ヒカリちゃんは意外そうに目を開いた。
「ヒカリちゃん、どうしてここに…」
「どうして、その服きてんの?」
あたしの声と、ヒカリちゃんの声が重なった。
あたしは慌てて答えた。