生き続ける意味 **番外編**





「あ、これ?昨日来て、そのままだったから…どうして?」



たしかに、あたしの服装は、パーカーとスカート。

部屋着って感じのゆったりしたやつ。


…どうして、こんなこと聞くの?


そう思ったとき、突然、ヒカリちゃんがあたしの手を取り、走り出した。




…え?

そう思った時には、もう腕が引っ張られてた。


その拍子に、点滴が抜ける。


ひたすら階段を降りる。


「ヒカリちゃんっ?ねぇ、どこ行くの?何してるの?」



力と勢いに負けて、抵抗しようもできないあたし。


どんどん階段を降りて、そこはもう病院の受付……



…え?


「ねぇ!ヒカリちゃん!病棟出ちゃダメだって!帰ろう!」


そう言うも、ヒカリちゃんは止まらない。



病院の外へ出る自動ドアにどんどん近づいてく。


と、同時にあたしの息もどんどん上がっていく。


く、苦しい……ヒカリちゃん、止まって……




ついに自動ドアをぬけると、右に回り、病院の敷地内にある公園に着いた。


外の冷たい風が、肌をきる。



すると、ようやく手が離れた。


「はぁっ……」


あたしはその場にしゃがみ込んだ。



あたしは何が何だかわからないまま、とりあえず必死で呼吸を整えた。


え…?ヒカリちゃん、何してるの…?



「はあっ…はぁ……」


ヒカリちゃんがあたしの隣にしゃがみこむ。


「…ちょっと、大丈夫…」



小さく頷くと、あたしは近くのベンチに座った。


たった1日だけなのに、外の空気が清々しく感じる。

上を見上げると、空いっぱいに広がる青。



「…桜、ちゃん、だっけ。」


隣に座ったヒカリちゃんが言った。


「…え?う、うん。」


「……なんの病気なの?」



公園の遊具でで遊んでいる子供たちを見ながら言った。


意外な言葉に、思わず固まった。



…早く、病棟に戻らなきゃいけない。こんな所にいちゃ、ダメ…

なのに、体は動かない。ただ、目の前の公園の風景をじっと見ていた。


「…血液の、病気。リンパとか……ガンってやつ、かな」



あたしがそう呟くと、ヒカリちゃんはびっくりしたようにあたしの方を向いた。




「…ガン?」


「…そうだよ。小さい頃になって、それからまた再発して…」



「……そうなんだ。」




なんで、あたし、病棟に戻ろうとしないんだろう。

だめだよ。戻らなきゃ、だめ。


看護師さん達が探すよ。迷惑かけるよ。

…どうしよう。


けど、戻りたくないっていう、自分もいる…







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