生き続ける意味 **番外編**
桜の元に駆け寄り、状態を起こす。
「桜!大丈夫か?!」
必死に声をかけるが、反応無し……。それどころか、手足がどんどん冷たくなってきてる…
たしか、ヒカリちゃんが向こうに…
走っていった方を見ても、もうヒカリちゃんの姿がなかった。
額が熱い……脈も早い。
こんなに熱があるのに…。
どうして外に出たりなんかしたんだ。
「…家の近くか。」
ここは、普段はめったに通らないけど、家のすぐ近所だった。
俺は桜を抱き抱えると、家に向かって急いだ。
ヒカリちゃんと何かあったのか…?それとも、本当に病院が、嫌で逃げ出したのか…?
答えのない考えが頭をめぐる。
とにかく……
桜の顔を見ると、熱で苦しそうだけれど、どこか傷を負ったりはないみたいだ。
「はぁ……よかった…」
心底、安堵してため息が漏れた。
家に着くと、ソファーに桜を寝かせ、その上から毛布をかける。
…貧血っぽいか。熱も高そうだし…できるだけ早く病院に連れ戻さないとな。
俺は、念の為、桜の腕の裾をまくった。
…何にも、傷はついてない。
よかった。
ソファーの下に座り、桜に体温計を挟んだ。
昨日の夜、泣きながら苦しいと言ってきた桜の表情が忘れられない。
病院にいたくない、そう言ってた桜を。
桜には言ってないが、安静にしてもらわないと、本当にしばらく入院となってしまう。
桜の病気は、前の移植で確実に回復方向にいったが、体がまだ万全じゃない。
まだまだ病み上がりで、ちゃんと様子を見なければいけない。
…ここで、無理をしたら、また体の調子を崩してしまう。
それも、普通じゃなくて、異常が起こってしまうかもしれない。
だから、俺は桜が部活をしたいって言った時、無理にでも止めた。
何も理由を聞かず、ただやめろと言った。
けど、桜は知らない間に部活をしていて、それは俺も忙しくてあまり桜と話せない中でもわかってはいた。
けれど、俺もあの時は、言うことを聞かない桜を、もう何も知らないって思ってた。
「バカだよな…本当に。」
頭をくしゃくしゃっとかくと、ため息をついた。
と、同時に体温計が鳴る。
「…39.1℃」
苦しそうに息をする桜を見ていられない。
俺が、あの時無理にでも止めていれば……こんなことには。
後悔だけが胸の中に残る。