生き続ける意味 **番外編**
心配そうに寄り添う亮樹兄ちゃん。
「…あたし、治るよね?亮樹兄ちゃん。」
声が、震えてた。自分でも怖くて、聞くのも怖くて…。
「ちゃんと、治るよね?嫌だよ。こんなの。
あたし、ずっとこのままは嫌だっ…」
亮樹兄ちゃんは、黙って頭を撫でると、あたしを抱き上げた。
そして、ぎゅっと力を腕に入れた。
亮樹兄ちゃんの体温が、背中から感じる。
「桜、ごめんな。」
聞こえてきたのは、意外な言葉だった。
「…え?」
見ると、悲しそうな目をした亮樹兄ちゃん。
声は弱々しくて、いつもの感じじゃないのがすぐわかる。
「苦しい思いさせてばっかりでごめんな。ちゃんと治してあげられなくて…」
そう言いながら、あたしの前髪をかき分けた。
え…?どうして?
なんで、亮樹兄ちゃんが謝るの?
あたしは必死に首を振った。
「なんで亮樹兄ちゃんが謝るの?あたしが悪いのにっ。
あたしの病気なのにっ…」
「ちがうよ。桜はなんにも悪くない。
俺が、ちゃんと早く治してあげられないから…。力足らずだから。」
やるせない顔で言う亮樹兄ちゃんを見てられなかった。
なぜか、余計に涙が出てきた。
「ちがう…亮樹兄ちゃんは、あたしのこと治そうと必死に頑張ってくれてるもん…
亮樹兄ちゃんは、なんにも悪くないもん…。
けど、あたしが言うことちゃんと聞かないからっ…ごめんなさい。」
申し訳なさやら、自分に対しての情けなさやら…。
すると、亮樹兄ちゃんは苦笑いした。
「ふふ、ありがとう。
けどね、俺が力足らずだってことは本当だよ。だから、ごめんな。苦しい思いさせてばっかで。」
あたしは大きく首を振る。
亮樹兄ちゃんの悲しげな顔を見て思った。…亮樹兄ちゃんも、苦しいんだ。
あたしだけじゃ、ないんだ。亮樹兄ちゃんも、あたしのことを必死で考えてくれてて、必死に悩んでくれてて、
あたしの同じように苦しんでるんだね。
そう思うと、弱音なんてこれ以上言えなかった。
あたしは必死で笑顔を作ると、亮樹兄ちゃんに言った。
「亮樹兄ちゃん、絶対に治すね。」
そう言うのが、今のあたしには精一杯だったんだ。