生き続ける意味 **番外編**
…言っていいのかな。どうなんだろう。
けど、亮樹兄ちゃんだから。
「…亮樹兄ちゃん、その話、あたしがしたら他の人に言う?」
亮樹兄ちゃんは少し考えて、口を開いた。
「…少なからず佑真には伝える。あいつが1番気にしてるんだ。
主治医として、何があったかは把握したいから、佑真には知らせてあげないといけない。
そうしないと、俺一人が知ったところで、ヒカリちゃんに何もしてあげられないだろ?」
…そっか。佑真先生はヒカリちゃんの主治医だもんね。当たり前か。
仕方ないよね、なんか人伝いに話すのって気が引けるけど、ヒカリちゃんのためなら仕方ない。
あたしはうなずいた。
「わかった。いいよ。」
それから、あの時のことを一つ一つ説明して言った。
何を言って、何が起こったかも。
すると亮樹兄ちゃんは少し黙り込んだ。
「そうだったんだ。やっぱり、そういうことがあったんだな。」
そう言うと、亮樹兄ちゃんは笑ってあたしの頭を撫でた。
「ありがとな、教えてくれて。」
「う、うん!
ヒカリちゃん、たぶん本当は、本心はそんなこと思ってないんだよ。死にたいとか、思ってない。
泣いてたから…」
「…そっか」
あたしはうなずく。
「ねぇ、ヒカリちゃんの病気ってどのくらい深刻なの?
でも、治療すれば治るんでしょ…?」
亮樹兄ちゃんは少し考えるように黙ると、うなずいた。
「もちろん、治療すれば回復の可能性はあるよ。
けど、肝心の患者さんの気持ちが投げやりになっちゃうと…なかなか難しいのは桜もわかるだろ?」
もちろん。だってあたしも同じだったから。
そして、その治る可能性っていうのも100%じゃないことだって。
「…ヒカリちゃん、すごく苦しいと思うの。
親も親戚も近くにいなくて、一人ぼっちで、病気になって…
あたしには想像つかないくらい大変かもしれないから…。」
もし、あたしがヒカリちゃんの立場だったとすると…想像つかない。
一体、何を考えて、何を思って、どれほど孤独で、どれほど怖いか。
「うん。とにかく、桜の話したこと、佑真には伝えるからな。
…桜、またヒカリちゃんの様子見に行ってくれるか?」
「…うん、けど…。
あたし、もうヒカリちゃんに嫌われちゃってるかも。ヒカリちゃんがあたしのことが嫌なら、近づかない方がいいのかもって思っちゃって…」