生き続ける意味 **番外編**
「…早く。俺、急いでんの。」
診察室。
亮樹兄ちゃんの顔が怖い。いつもに増して怖い。
「余計なこと言わないで、さっさと座る!」
腕をグイッと引っ張られて、患者さんの丸いイスに座らされた。
亮樹兄ちゃんは溜息をつきながら、準備する。
「もー、いい加減素直に動いてくれないかねー?
高校二年生さん?」
そんな亮樹兄ちゃんをあたしは完璧スルー。
イスをクルクル回して遊ぶ。
だってさ、なるべくしたくないじゃん?採血とかさぁ…
好きな人なんていないって!
「嫌いでも桜ほど駄々こねる奴も少ないぞ。」
なんでみんなじっと我慢できるのかが不思議。
だって、怖いじゃん、痛いじゃん…
「ねぇ亮樹兄ちゃん、いつになったら退院できるのー?」
「桜の調子が良くなってから。」
「…いつ??」
亮樹兄ちゃんは首を傾げてうなる。
「えー、予定はねー」
え、予定?そんなものがあるとは!
い、いつ?
亮樹兄ちゃんはあたしの腕をグイッと掴むと、引き寄せた。
うわっ、びっくり…
「その予定を決めるために検査が必要だって言ってるでしょ!
早く退院したけりゃ、素直に受けなさい。」
ぴしゃりと言われて、何も言えなくなるあたし…
亮樹兄ちゃんはそのままあたしの腕を固定すると、採血のための注射器を出す。
「はい、刺すからねー?ちょっと我慢だよ。」
その声の直後、チクッと痛みが走る。
けど、こんなこと、もう何十回やったか数えきれない。