めはくちほどに
コンビニへ寄るという名目で財布を持っていたけれど、何よりコインパーキングのお金を払うため。
スーパーのときは払い損ねたから。
「紺野さんの家、落ち着くよ」
「古いからじゃないですか? 星子は結構気にしてて、友達呼べないってごちてた時があります」
「そうじゃなくて、空気が」
「家族が多くて唯一良いところですね、楽しいのは」
夏の夜の空気は静かで、何かの虫が鳴いているのが聞こえる。
不思議とそれは耳につく音ではない。
副社長が笑う。この人もよく笑う人だ。
家に来るまでは全く知らない、接点もなかった人だけれど。