めはくちほどに
地球は丸い
「紺野さん」
仕事を定時で終わらせ、鞄を持って社を出た。
出たところで呼び止められた。
何かやり残したっけ、とコンマ数秒考えて振り向く。
そこにいたのは同僚でも上司でも後輩でもなく、副社長だった。
「はい」
「ちょっと時間ある?」
「すみません、ちょっと急いでいて……」
「じゃあ送って行く」
私の返事を聞く前に、副社長が戻っていく。
人の話は! 最後まで! 聞きましょうよ!
放置された私はここでじっと待つしかない。いや、もうこれは帰っても怒られないんじゃないの?
腕時計を見ていると、会社の前の通りに車が停められた。