めはくちほどに

まあ別に、家族に害はないし良いかな、と思う。
そんな簡単な思考回路で。

「はい、うちで良ければ」

副社長が笑った。すっと、顔が近づいて私の頬骨あたりに唇が触れた。

……はい?

「ありがとう、ごちそうさま」

それは一体何のごちそうさまだろうか。
と、一瞬でも考えた自分が恥ずかしい。

「じゃあ、おやすみ」

「お、やすみなさい」

夜で良かった。

顔が人生最高に熱を持っている。


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