めはくちほどに
夏は暑い
そうだ、あの人はぶっとんだ人だった。
頭のねじをどこかに落としてきてしまった、残念なひとだ。
私が探しに行った方が早いか、病院で治してもらう方が早いか。
「緋咲、副社長とどこ行ったの?」
「え」
同期で秘書課の河上と一緒にお昼を食べていた。少し声をひそめるので、私も自然とひそまる。
「な……どこ情報?」
「社内の副社長を狙ってる女子は殆ど知ってる。社の前で副社長の車に乗ったとか」
通りでエレベーターの中で視線を感じたのは、そういうことか。
まあ、あんな所で車に乗り込めば、噂にもなる。