めはくちほどに
そんな相手に、私はまた家に来ても良いと言ってしまったのか。
いや、でもあれから副社長と顔を合わせてすらいないので、社交辞令だったという線も濃くなってきた。
『緋咲ちゃん、結婚しないの? 鷹村さんと』
妹二人が部屋に戻ったリビングで、海都が世間話をするように言った。
『付き合ってもないし、あの人副社長だよ? 貴族と平民でしょう』
『時代も違うし国も違うし』
『みんなには夢を見させて悪いけど、副社長なんだからお見合いとかじゃんじゃん来るだろうし』
冷えた麦茶のカップから水滴が落ちる。
『そうかな』
海都が言った。