めはくちほどに
窓がういーん、と開く。私は運転免許を持っていない。家族で持っているのは姉だけだ。
「副社長、あの私、寄るところがあるので」
「うん、寄るよ」
「いえ、あそこ駐車場が小さかった気がするので」
「分かった。近くのコインパーキングを探す」
分かってくれない。それでも私が動かないので、副社長も動かない。
私は内心、後ろから車が来てクラクションを鳴らされないかとひやひやしている。
「乗ろうよ」
その言い方はずるい。一緒にしよう、みたいな言い方で、選択を促すのは。
私は渋々その車に乗った。