めはくちほどに
コップから滴った水滴の場所に手をついてしまったらしく、ずるりと滑った。
肘を打つ、前に二の腕を掴まれる。
大惨事にはならなかったけれど、結局コップをひとつ倒した。
「す、すみません」
副社長のワイシャツが濡れている。素早くコップを立てて、テーブルの端に置いてあった布巾を取る。
「いや、それより。君は大丈夫?」
「私は全然。わああ、麦茶色に、洗濯機に放りこんでおいてください。洗っておきます……家の洗濯機で洗って大丈夫なやつですか?」
「頼みます」
「本当にすみません……」
自分の落ち着きの無さに呆れて落ち込む。