めはくちほどに

しゃこしゃこと隣で歯を磨いている。

まるで家族の一員になったみたいに。

河上の言っていたことをふと思い出す。

「副社長、あの」

「うん」

ドライヤーを切って、副社長の方を見た。副社長も手を止める。

「今度うちの姉に会いませんか?」

「姉って、霞さんって人?」

「そうです。お姉ちゃん、忙しいことも多いんですけど、きっと副社長のこと聞いたら来ると思うので」

目をぱちくり。あ、可愛い。

「会えるなら会ってみたい」

「はい、今度言っておきますね」

玄関の鍵が開けられる音がした。足音がして、洗面所まで来た。

海都だ。

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