めはくちほどに
「おかえりー」
「お帰り。お邪魔してます」
「ただいま、どうも。鷹村さん泊まるんですね」
「下着と服借りてます」
「返さないで良いですよ。どうせ星子辺りが出したんでしょ」
疲れた顔をしている。海都は自分の部屋に入ってからリビングに来た。
麦茶を出すと、「ありがと」と短く言ってそれを飲み干す。
「何かあったの?」
「今日クレーマー来てさ……なんか大変だった。後輩が泣いて」
「それで?」
「社員さんがどうにか対応してくれて、穏便に解決した。でも後輩が泣き止まなくて」
椅子の上で足を折りたたむ。副社長はソファーに座って静かにしていた。