めはくちほどに
ポケットに入れていた携帯が震えた。
課長の目を盗みながらそれを確認すると、お姉ちゃんからだった。
「彼氏?」
「お姉ちゃん」
「紺野って姉貴いんの? 見えない」
どういう意味だ、と隣の席の同期を見る。
「紺野が姉貴って感じ」
「上より下の方が多いのは確かだけど」
やっぱりなあ、と言われた。喜ぶべきところなのかどうかは分からない。
いつでも来られるらしい。
「どんな姉貴?」
「羨ましいくらい楽しそうな人生を歩んでるひと」
「へー、そりゃ羨ましい」
ねー、と同調した。