めはくちほどに
まさか内線に連絡するわけにもいかず、私はそのまま駅に向かった。
またふらりと副社長が来るんじゃないか、と思っていたけれど、そんなことはなかった。
私って本当に頭が悪いと実感する。副社長、どうにかして家まで辿りついてください……と願った。
それは私が定時に帰ることができても、他にも沢山残業している人たちはいるわけで。
副社長だって暇なわけではない。
「ひさちゃん」
とか思っていたら、家の最寄り駅にいた。
びっくりして、心臓が痛い。
「会社の最寄りで待ってたら嫌かと思って、ここで待ってた」
なんて忠犬ハチ公みたいな台詞。