めはくちほどに
副社長はきょとんとした顔をしてから、にこりと笑う。
「霞さんと付き合えたら楽しそうだね」
海都がこちらを見て、小さく溜息を吐くのが聞こえた。言いたいことは分かる。でもまだ言わないで。
それが狡いのも重々承知だ。
副社長はケーキを食べてから家を出た。お姉ちゃんが観たいテレビがあるから、とソファーから動かなかったので、私が見送ることになった。
「今日はありがとう」
「こちらこそ。ケーキ、沢山頂いて」
「今度から種類揃えることにするよ」
そんな言葉に笑う。
街灯に虫が集まっていた。