めはくちほどに
そんな無言の主張も虚しく、優しく口を啄まれた。
私もただそれを甘受して、遣る瀬無い気持ちになる。
「『自分を好いてくる人を霞ちゃんに会わせて、自分から興味を外そうとするんですよ』って海都くんから教わった」
「そうだったんですか」
「こんな風に試してくるひと、君が初めてだよ」
顎から手が離されて、私の手を握る。
試したけれど、結局私が試された。
「お姉ちゃん、とても良い物件だと思いますよ」
「僕はどんなに広くて綺麗で新しくても、一番に日当たり重視だから」
「日当たり?」
「光が差し込まないと、朝が来たって分からないから」