めはくちほどに
おめでとう、と言ったのは河上。
「いつ辞めるの?」
「なにを?」
「仕事。流石に副社長は家に入って欲しいって言うでしょう。稼ぎだってあるし」
「え、結婚しないけど」
「しないの!?」
声が大きい。私は手でどうどうと抑える。
河上が眉を顰めた。
「だって、まだ星子15だよ? 今年受験だし、高校卒業まではね?」
「それ了承してくれたの?」
「うん」
「へえ……不思議なひとだとは思ってたけど」
社食のうどんを食べ終えた河上は言う。