めはくちほどに
エレベーターの前で待っていると、河上がポケットを叩いて「やば、携帯置いてきた」と言ってテーブルへ戻って行った。
その背中を目で追う。そしてエレベーターが来てしまった。
私は前を退いて河上を待つ。
「乗らないの?」
エレベーターの中から聞こえたのは、副社長の声。
「あ、はい。すみません、河上が」
「お待たせしました!」
走ってきた河上と共にエレベーターに乗る。
仕事柄か、河上はボタンの前に立った。
「外でお昼ですか?」
副社長に聞くと頷き、「社長とね」と加えられた。
「何食べたんです?」
「蕎麦」