めはくちほどに
エピローグ
「死ねたら楽だって思うときがある」
どうしてそんな言葉が口から出たのかは分からない。
酒が回っていたからか、話したこともない部下だったからか。
「周りの人間を苦しめたいと思うなら、一番それは楽な方法だと思います」
彼女は淡々と答えた。怒っているようにも見える。
「尤も、私は残された方しか分かりませんが、死んじゃった方はどうなんですかね。楽なのかな」
電車の扉に寄りかかり、暗くなった窓の外を見ている。
「君、死にたいと思ったことないの?」
何を聞いてるんだろう。
これってもしかしてパワハラか。
「ありますけど、残していけない家族がいるので」