めはくちほどに
さっきまで、飲み会では愛想笑いを浮かべていたのに。
どうしてそんなに怒っているのだろう。
「君にそんな風に思われる家族が羨ましいね」
「そうですか?」
「君の家族になったら、僕もそう思ってもらえるの?」
彼女はきょとんとしてから、はにかんだ。
あ、笑ったら可愛いじゃないか。
「副社長は私が思わなくても、他に沢山いるじゃないですか」
「残して死ねないなんて、言われたことないよ」
電車が駅に停車する。自分のマンションの最寄りだった。
これは終電。逃すとタクシーで帰ることになる。