お茶にしましょうか
「仲間のためになるわけない…」
ぽつりと一つ呟くと、私の感情もなだれ込む様で止まらなくなりました。
彼は自分の劣ることを自らで認め、それを改めようと努力を積んでいるのです。
そんな人を見限るなんて、そんな酷い話があるでしょうか。
ええ、私の考えが甘いことくらいはわかっております。
それでも何かが湧き上がるのです。
「そんなことをおっしゃったって、仲間のためになるはずがありません!」
「立前を言うなよ」
「これは本音ですので」
「それでも、要らないものは…要らないんだ」
「確かに、全ての人から必要とされるわけなどありません。されていなくとも貴方は、何人もの誰かにとって、大切な存在なのです。
その人たちの気持ちが存在することを知りませんか…?!」
やはり人は見かけによらない、というところでありましょうか。
今の時点で江波くんは、慎ましやかである分、非常な程に仲間思いであるという印象を受けております。
ひどく不器用なだけではないでしょうか。
「べ、別に、誰も…俺なんて…」
「ほら、今、自分しか見えていないではありませんか」
私は苦笑いで返してみせました。
実はこの時、私は胸を撫で下ろしていました。
彼の表情が、江波くんに戻っていたからです。
頬を紅く染め、先程までの落ち着きは微塵もない、私の夢中な江波くんでした。
「す、すいません…ありがとう…情けない姿を見せてしまって、悪かった」
「いえ。正気に戻っていただけて、よかったです」
つい嬉しくなって、微笑みそう言うと彼は困った様子でした。
そして、彼の瞳は光を取り戻してくださいました。
「やっぱり悔いが残らないようにしたい。今年の夏が、最後…だからな」
「え、もしかして…先輩ですか?」
ここにきて、まさかの事実が判明いたしました。
正直のところ、年上には見えなかったものですから。
Scene 3 建前と追い風