お茶にしましょうか
そこでちょうど、江波くんが何処からか、戻ってこられたのです。

私は、笑顔で迎えました。



「おかえりなさい」

「あ…すみません。只今戻りました」



江波くんは、軽く会釈をされ、小走りで戻ってらっしゃいました。

そして、その手には、携帯電話を携えていたのです。

私の目線に気付いた江波くんは、慌てて制服のズボンのポケットへ、携帯電話をしまわれました。



「江波くん。この後、用事か何かおありですか?もし、あるのでしたら…」

「い、いえ!帰ったら、飯食って、風呂入って、寝るだけですよ!…俺は。だから、用事なんて何も…」



早口にそう言う江波くんが面白く、つい私は笑ってしまいました。

そのような姿が可愛らしいとも、つい思ってしまったのです。

しかし、今更になって少しばかり、気になったことがありました。

何故、江波くんは今日、私を誘ってくださったのでしょうか。

いつもの帰り道には、きっとお友達もいらっしゃったはずでしょうに。

放って置いていかれてしまったのでしょうか。

お友達の方々は、どちらに行かれたのでしょう。

私はそのまま、江波くんに尋ねました。



「どうして今日は、一緒に帰ろうだなんて、私を誘ってくださったのですか?」



すると、江波くんはぎょっ、とされたのです。
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