お茶にしましょうか



「実は、私──

「待ってください」



私から握った手を江波くんは、ゆっくりとほどき、私の言葉を止めました。

ゆっくりと離された手の感触が、温もりが、微かに残りました。

私はそれに、ひどく寂しさを感じていたのです。

それの前に、告白を決意した私の言葉を、遮られてしまいました。

まさか、このようなことをされるとは、思ってもいませんでした。

私は、拒否されてしまったのでしょうか。

江波くんを窺うと、その表情からは拒否されているのか、そうではないのかを読み取ることは出来ません。

とても複雑なお顔をされていました。

私は、不安でなりませんでした。

しかし、そのような私に江波くんは、いつもと何一つ変わらない彼で、お話を続けられたのです。



「その先は…少しだけ、待ってもらえませんか。俺からも言いたいことが、あって…その前に一つ。確かにしておきたいことが、あります」

「…何でしょう?」

「萩原さんは、俺のことを恨んではいないんですか?実は、恨んで、いますよね…?」

「恨む…?どうして、そのようなことが出来ましょうか。私にとって、江波くんは、憧れでしかありません」

「本当…に?」



何故、これ程にまで、今日の江波くんは慎重になられているのでしょうか。



「本当です。どうか、信じてください」



私は必死な想いで、江波くんを見つめました。
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