お茶にしましょうか

本当に私は江波くんに対して、恨むなどと、そのような不穏なことは、一度たりとも考えたことはありません。

ただ、彼に惹かれていただけなのです。

江波くんも、私の見つめる瞳が意味することを、汲み取ってくださったようでした。

江波くんは目を伏せ、こうおっしゃったのです。



「…すみませんでした。信じます…」



しかし、不器用で慎重な彼ですから、心の何処かでは、あと少しばかり疑っているやもしれません。

純粋に私の心情を、受け取ってほしい、その一心で、私は唐突に叫びました。

もう江波くんの「待て」も聞きません。



「江波くん」

「はい…」

「私は、貴方のことが好きです!」



すると、江波くんは、目を皿にしたかの様に円くされました。

どうでしょう、伝わったのでしょうか。

緊張と期待で、高鳴る胸の音を聞きながら、江波くんの反応を待ちました。



「えっ、あ………えっと、リョウさんは…?」

「はい?」



私は訳がわからず一度、瞬きをしました。



「リョウさんのことは、良いんですか…?」

「リョウさんのことも、もちろん、とても大好きです!」



何故、ここでリョウさんの名が出てきたのか、私にはよくわかりませんでした。

わかりませんでしたが、とりあえず本心を自信を持って、答えておきました。

すると、江波くんは、唇を噛み締めてらっしゃったのです。


< 115 / 160 >

この作品をシェア

pagetop