お茶にしましょうか
電話を切った後、彼女の元へ戻る。
萩原さんは、一息しているところだった。
俺に気づき、彼女はいつもの上品な笑みを向けてくれる。
「おかえりなさい」
それは、まるで夫婦を思わせるようなやり取り、などと馬鹿なことを考えてはいけない。
とりあえず、俺は返事だけをして、元居た位置へ駆け足で戻る。
とにもかくにも、ここで決めなければ、家に入れない。
萩原さんと会話をしている間にも、俺の頭は今日の目標を達成せねば、という思いでいっぱいだった。
その時だったのだ。
「どうして今日は一緒に帰ろうだなんて、私を誘ってくださったのですか?」
萩原さんにこう言われた時、俺は図星を刺された感覚に陥った。
当然、俺は動揺し、彼女に怪しまれるのが、オチだ。
しかし、このままでは駄目だ。
このまま、いつもと変わらず居たら、家に帰れない。
とりあえず、深呼吸で自身を落ち着かせる。