お茶にしましょうか






式の後、在校生は各々の教室へ戻っておりました。

今日、卒業されてゆく先輩方へ、最後の挨拶をしに行かれた方もいらっしゃいますし、教室に残り、友人らと雑談している方々もいます。

私も江波くんに、一目だけでも会っておきたいのです。

しかし、窓から校庭を見渡していても、見当たらないのです。

私は卒業式の時よりも、泣いてしまいそうでした。

半分、諦めていた時でした。

正門付近の桜の木の下で、江波くんたち、クラスの方やチームメイトの方々が丁度、写真撮影をされているところだったのです。

もう会えないかもしれない、という不安が払拭された瞬間でした。

私は自身の鞄の中に入れて置いた、ある物を手にし、慌てて教室を飛び出しました。

校庭に出て、私は目的の桜の木へと、歩みを進めました。

足は、震えておりました。

そして、私がようやく桜の木に到達したときには、野球部の愉快なお仲間と、江波くんだけが残っていたのです。
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