お茶にしましょうか
江波くんの手にあったのは、卒業式の日に桜の木の下で撮った、あの写真だったのです。

その写真の中にある全てが、綺麗に残されていました。



「現像が出来たので、萩原さんに渡さないといけない、と思ったので…」

「ありがとうございます。一生の宝物にしますね」



私は、それを受け取りました。

そして、肩にかけていた、リョウさんの入ったケースを地面へ下ろします。

ケースを開ければ、直ぐに見えるポケットにその写真を入れ、飾りました。

これで江波くんと、いつでも会うことが出来るのです。

何と素敵なことでしょう。

改めて、ポケットからよく見える写真に、私は心奪われ、ぼうっとしておりました。

そして私は、すぐそこに存在している本物の江波くんを見上げました。



「わざわざ、この写真を届けに来てくださったのですか?」

「いえ。それだけでは、ありません。後輩に会いに来たら、いけませんでしたか?」

「後輩…ですか…」

「すみません。少し嘘を吐きました。そんな顔、しないでください」
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