お茶にしましょうか
Scene6 早過ぎる恋敵 2
勝ち目の見えない恋敵が現れました。
こちらに勝機など、微塵もありません。
休み時間の廊下で、江波くんをあんなにも幸せそうに、はにかませることが出来る様な女性なのですから。
彼ったら、私の前ではいつも必ず、一度ぎょっとしてみせて、唇を噛み締めてみえるのです。
きっと私と彼女では、天と地の差なのでしょう。
暖かい陽射しが差し込む窓辺にて、私は珍しい程に、悲観的になっておりました。
先日、部活動からの帰路についた時に偶然、野球部のマネージャーである彼女に再び出会ったのです。
そして、私は一人で片付けをする彼女を手伝っていたのでした。
『野球部に江波くんという方がいらっしゃいますよね。ご存知でいらっしゃいますか』
『ええ、幼なじみですが』
まず、ここで私は言葉を失ってしまいました。
江波くんとの関係を尋ねましたが、幼なじみでマネージャーということは、間違いなくそういうことです。
私は、そう確信いたしました。
そして、その後の彼女の言葉には、気を失ってしまいそうでした。
『まさかとは思いますが…あれと私のことが気になりますか』
それはもう、図星でありました。
それに加えて、彼のことを「あれ」などと平気で言えてしまえるのです。
相当なやり手でいらっしゃるのだろう、と思いました。
会話の中に溢れた言葉の数々が重りとなって、胸に溜まってゆきます。
江波くん。
貴方は、普段はあまり喋ろうとはしませんが、嬉しそうに挨拶してくださるのは、私だけではなかったのですね。
女性を相手にするというだけで、極度に緊張してしまう、本当にそれだけだったのですね。
少し悲しくなりました。
少し貴方の特別になれているやもしれない、そんな風に自惚れていた私が恥ずかしくなりました。
考えるだけで、私の目には熱いものが込み上げてくるのです。
感情があっちへこっちへしており、一向に落ち着くことは出来そうもありませんでした。
私は平静を装うためには、彼女の問う質問にはっきりと明確に返すしかない、と思いました。
そう思い、構えた時には次の彼女の言葉がやってきました。