お茶にしましょうか
小テストのその点数は『0点』と赤く、大きく書かれている。
名前を見るに間違いなく、それは彼女のものだった。
回答欄は、見事な程に全て埋まっていた。
それなのに、その全てに誤りを表すバツのマークが、赤のインクで付けられていたのだ。
例え、勘だったのだとしても、全てを埋める彼女には、相変わらず頑張り屋なのだな、と感心してしまう。
しかし、そのようなことよりも、一番に驚かされたのは、意外にも彼女が勉強は不得手だった、ということだった。
俺も元々、勉強はどちらかと言えば、得意な方ではない。
だが、成績は標準のあたりである。
とは言えど、このままでは俺の希望する進路は厳しい、と担任から言われているところだ。
その状況を少しでも回避したい、それぞれ思うことは皆、やはり同じであった。
マネージャーを含めた3年生の部活メンバーで教室に居残り、勉強会を行っていた。
これを始めたきっかけは、メンバーたちの愚痴からだった。
「一人では、勉強が手付かずのままだ」「野球漬けの日々だったから、勉強の仕方がわからない」
正直、俺は大人数で集まってしまっては、逆効果だ、と思っていた。
しかし、なんてことはない。
予想を思い切り上回り、はかどってしまったのだ。
深海魚の君も誘おうか。
そのような考えが、一瞬過ぎったが、そもそもこのようなむさ苦しい場所など御免だろう。
そう思い直した。
女子が男の集団の中に入り込むなど、そう出来ることではない。
しかし、マネージャーは別として。
Scene 10 赤丸と努力家