お茶にしましょうか
Scene11 深海魚、混入につき
時は既に、放課後であります。
私はこの後、部活動を行うべく、音楽室へ向かう予定であります。
しかし、その前に行かなければならない場所がありました。
突然に呼び出されたのです。
いいえ、今日は職員室ではありません。
今日は「生徒指導室」でした。
さて、私が一体、何を仕出かしてしまったというのでしょう。
心当たりは、全くございません。
「生徒指導室」と書かれた札のある扉の前に辿り着くと、私はノックを3度いたしました。
「どうぞ」
「萩原です。失礼いたします」
ノックをした後、返事をくださったのは、女性でした。
扉を開くと、返事をくださったであろう女性が、使用していたノートパソコンの前から立ち上がり、こちらに向かってこられました。
その方は、音楽を担当してみえる先生でした。
背が低めの、少しばかりふくよかな方です。
入口に置かれた教材を入れるための棚、人にとってちょうど良い高さの棚に手をつくと、体をやや傾けました。
すると、先生は一度、可愛らしく笑ったと思えば、私に問われました。
「何故呼ばれたのか、わかる?」
「申し訳ありません。全く心当たりが思い当たらないのです」
「うん、あなたはいつだって、一生懸命だものね。それで、あなた、よく廊下を走っているわよね」
突然の先生の発言に驚いて、動揺してしまいました。
いわゆる私はぎょっ、としてしまったのです。
私のことをよく、ご覧になってらっしゃいます。