お茶にしましょうか
江波くんは、考えておられました。
彼の目線はある一点から動かずして、表情は険しいままでした。
マネージャーの彼女は、江波くんに自分で考えさせるため、と言ってしばらく彼を放置しておりました。
しかし、とうとう痺れを切らし、彼女は再び前のめりになり、教えだしたのです。
やはり彼女は優しい、良い方です。
勉強も出来てしまい、気が利く、素敵な女性であると私は思います。
そして、やはり彼女は江波くんにぴったりです。
これは、私の嫉妬などでは決してありません。
自身でもよくわかりませんが、何故か、素直にそう思うことが出来るのです。
これを彼女に聞こえるように言ってしまうと、私の身が危険に晒されるのでしょうけれど。
何となく、江波くんが苦戦している問題が気になってしまいました。
睨み合う距離のお二人に近づき、同じように覗き込んでみたのです。
「どのような問題をされているのですか?」
私がそう問いた瞬間に、江波くんはもの凄い勢いで、椅子に背もたれまでのけ反られてしまいました。
そして、それにも構わず、マネージャーの彼女は毎度のように、私に少しばかり厳しめの言葉で物申しました。
「今のあなたじゃ、無理ですよ」
「ええ、ですから、未来の予習になるかと思いまして」
「まずは、あなた相応なものを頑張ってください」
「はい、頑張ります!」
彼女から応援されてしまい、嬉しくなりました。
そのようなことの次に、気になっていたことが一つありました。
先程の、江波くんです。