お茶にしましょうか



「いつも江波くんは、私を癒してくださいます。貴方の存在だけで、とても有難いのです。江波くんが私にとっての害になるだなんて、決してありません。
ですから、どうか、お気に病まれないでください」



彼女は軽く会釈をすると、そのまま行ってしまった。

俺はそれを、引き留めることができなかった。



「ひゅー、お熱いねぇ!」

「おい、江波!癒すって、あの子に何したんだよ‼」

「すっかりあの子の王子様だね、江波」

「王子っ言(つ)っても、頭、坊主だけどな!」

「ばっ…!お前らっ‼」



しくじった。

こいつらが直ぐ隣に居ることを忘れ、深海魚の君に声をかけてしまった。

冷静ではあったが、後先を予測することをすっかりと忘れていた。

声をかけたのは、別に下心などではない。

ただ淋しかったのだ、俺が。

チームメイトたちの冷やかしに一々反応しながらも、目線だけは、徐々に小さくなっていく彼女の姿を見送っていた。

その姿とは、あまりにも弱々しく見えた。



「別に、追いかけて行ってもいいんだぜ」

「お前ら、本当にいい加減にしろよ…!」

「赤い顔で言われても、説得力ねぇよ」



これは無意識だった。

ああ、このままでは、納得がいかない。

はっきり、明確にする必要がありそうだ。
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