お茶にしましょうか



「オレンジジュースがいいです」

「…今日は、可愛らしいもの、飲むんですね」



少し驚いた様子の江波くんは、自動販売機に小銭を入れながら、そのようなことをおっしゃいました。

本来ならば、その「可愛らしい」という言葉は、どちらにとるべきなのでしょうか。

他の方なら、きっと思われるのでしょう。

これは、小馬鹿にされているのでしょうか。

はたまた、これは褒められているのでしょうか。

もちろん私は、後者をとります。

私は嬉しく思い、熱い顔のまま、江波くんから差し出されたスチール缶を受け取りました。



「ありがとうございます」

「いえ」

「江波くんは、何を飲まれるのですか?」

「俺は…」



少し迷う仕草を見せた後、江波くんが手にしていたものは、ミルクココアでした。

江波くんの方が可愛らしいものがお好きなのだと、私は思います。

そして、私たちは木陰のベンチに座りました。

これでは何だか、お付き合いをしている様に見えるのではないでしょうか。

私は、かなり浮かれていました。

それは、何故かというと、愛しの江波くんがたった今、私の隣にて、ミルクココアを手の上で転がして遊んでみえるのですから。
< 57 / 160 >

この作品をシェア

pagetop