お茶にしましょうか
「オレンジジュースがいいです」
「…今日は、可愛らしいもの、飲むんですね」
少し驚いた様子の江波くんは、自動販売機に小銭を入れながら、そのようなことをおっしゃいました。
本来ならば、その「可愛らしい」という言葉は、どちらにとるべきなのでしょうか。
他の方なら、きっと思われるのでしょう。
これは、小馬鹿にされているのでしょうか。
はたまた、これは褒められているのでしょうか。
もちろん私は、後者をとります。
私は嬉しく思い、熱い顔のまま、江波くんから差し出されたスチール缶を受け取りました。
「ありがとうございます」
「いえ」
「江波くんは、何を飲まれるのですか?」
「俺は…」
少し迷う仕草を見せた後、江波くんが手にしていたものは、ミルクココアでした。
江波くんの方が可愛らしいものがお好きなのだと、私は思います。
そして、私たちは木陰のベンチに座りました。
これでは何だか、お付き合いをしている様に見えるのではないでしょうか。
私は、かなり浮かれていました。
それは、何故かというと、愛しの江波くんがたった今、私の隣にて、ミルクココアを手の上で転がして遊んでみえるのですから。