お茶にしましょうか
Scene14 躍動する若人たち
今日も俺は、机には向かわないでいた。
なぜなら、今は進路の面接練習期間だからだ。
3年生の棟の教室は、ほとんどが使用することが出来なくなっていた。
面接の練習は、出席番号の順となっている。
俺は2日も前に、ようやく済んだばかりだ。
早いところ、家に帰って勉強をするべきなのだろうが、どうにも気が乗らない。
帰ったとしても、塾には行っていないため、俺は自室の布団の上で怠惰に昼寝をするだろう。
そのようなことは嫌だ、と思った。
そのような俺が選んだ行動は、他にはたった一つしかなかった。
俺は今、グラウンド内に居る。
もう少し細かくして言うとすれば、バットを握って、グラウンドの隅で素振りをしている。
懐かしく感じるバットを握る感触は嬉しく、堪らなかった。
久しぶりの感覚に浸っていた時、左側前方から声がかかる。
「江波先輩!」
その声は、部活の後輩の者であった。
「今、大丈夫っすか?俺のスウィング、見てください!」
こいつの姿を見て、よく思うことがある。
俺も、先輩に甘えておくべきだった、と今になって後悔している。
『おい、江波。お前、もっと先輩を頼ってくれたって、よかったんだぞ』
頭の中から、懐かしい声が聞こえた。