お茶にしましょうか
振り返ると、そこには江波くんが居たのです。
江波くんは私に背を向けて、机に手をついていたのです。
それは、とても不思議な体勢でした。
「まあ、江波くん!どうして、こちらに?」
「え?…あ、えっと…い、今、15分間の休憩時間なので」
「あら、そうだったのですね」
「はい。あ、あの…お疲れ様でした。大成功でしたね。…とにかく圧倒されました」
「ありがとうございます。ここまで踏み出せたのも、江波くんのおかげです」
「いや、俺は別に何も…」
やはり江波くんは、謙虚におっしゃるのです。
すると、江波くんは、私の方に向けて、指差したのです。
その指の先が指しているものを辿ると、それは私の一番近い机に置いてありました。
そこにあったものは、たこ焼の前売り券でした。
「クラスの奴等に渡してこい、と命令され…いや、配り歩いてこい、と言われたんで…
よかったら、買いに来てください」
「ありがとうございます!是非、貢献させていただきます。おいくらですか?」
私は自身の机にかけてあった、スクールバックから、小さな小銭入れを取り出しました。
しかし、江波くんは首を振られたのです。
「お代は結構です。初御披露目の…お祝いです」
そう言って、軽く会釈すると、江波くんは駆け足で去っていきました。
お祝いまでいただけて、今日は本当に嬉尽くしの一日です。
それにしても、一つだけ、疑問に感じたことがございました。
江波くんは、出入口付近で可笑しな体勢をしていらっしゃったはずですのに、何故、私に一番近い場所にたこ焼の券を置けたのでしょう。
私は、それだけが不思議でなりませんでした。
Scene 15 二日掛かりの御祭騒ぎ~1日目~