お茶にしましょうか
今のこの時間帯に来てしまった女生徒に、俺は少し同情しつつ、たこ焼きをひっくり返す。



「もう少しだけ、待っててねぇ」



こちらから見ていても、気分を害する程にやけている二人が、金券を受け取る。

そして、2人は女生徒の手元から、徐々に目線を上げていく。

その女生徒の顔は、誰もがよく見知ったものだった。



『って、深海魚かよ!』



2人は、仲良く声を揃え、叫ぶ。

俺は2人に軽く怒りを覚え、使っていた千枚通しを奴等に向かって、振りかぶろうとした。



「ご、ごめん!ごめんってば!江波!!」

「やめて!狙わないで!!」

「まあ!江波くんが焼いてくださるのですね。とても楽しみです!」



阿保共の隙間から覗く萩原さんの笑顔に、俺は射貫かれてしまった。

もしかして、俺は彼女に惹かれつつあるのか?

駄目だ、萩原さんには、あのリョウさん以上に愛しいと思う人がいるのだ。

彼女から昨日、そう言われてしまった。

例え、俺の気持ちが彼女に惹かれていたとしても、俺なんかが邪魔することは、出来ないのだ。

すると、チーム内でよく毒を吐くことで有名なあいつが、裏方の仕事を止め、前に出ていく。



「深海ぎょ…じゃなかった。萩原さん、だよね?」

「…ええ」



あいつが、一瞬だけ俺を見た。

何をするつもりだ。

非常に情けない事だが、俺はあいつには逆らうことが出来ない。

このまま、見守るしかないのか。



「昨日の有志ステージ、格好良かったよ」

「あ、あら…ありがとうございます。照れてしまいますね」



彼女は、頬を赤らめている。
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